GAME03

春季大会トーナメント2回戦。対するは強豪・保善。保善と言えば全国大会を制している名門中の名門である。今年もシード校となっている。法政は数多くいた怪我人がようやく帰ってきた上、中学から上がってきた期待のルーキー達も非凡な才能を発揮しスタメンに名を連ねた。ようやくベストメンバーで戦える。OBもたくさん応援に来てくれた。今日の応援は一味違う。かつては東京都の決勝戦が法政vs保善という時代もあったのだ。

保善ボールのキックオフ。ついに関東大会の予選も兼ねた、春季大会が始まった。

前半1分。保善ラインアウトをLO堤を中心とした法政DFが見事ターンオーバー。ビッグゲインには至らなかったがいきなり良い流れを引き寄せた。その後も法政は素晴らしい立ち上がりを見せ保善陣へと攻め込んでいく。

5分。法政ATが止められ保善ボールとなる。だがここでFL大屋が火の出るようなタックル。保善はたまらずペナルティーを犯し、SO山福のタッチキックから保善陣5mでのラインアウトという絶好のチャンスを得る。

6分。このラインアウトからFWがピックゴーアタック。徐々に保善ゴールへと迫っていくが、あと数mというところでノットリリースザボールの反則を犯してしまう。ここでは先制点は奪えない。

9分。今度は一転保善の反撃。法政がミスしたボールを大きく前方へ蹴り出す。前ががりになっていた法政は戻りきれずあわやというところまで押し込まれるが、ただ一人だけこのボールに追いついた男がいた。WTB今野である。自慢の俊足を生かしボールに追いつき、そのまま素晴らしいキックでエリアを回復した。チームを救うプレーを見せた。

12分。依然法政の時間帯。ハーフウェイライン付近の攻防にて、保善DFが前へ出てきたところで山福が左サイドへの絶妙のゴロパン。一気にゴール前へと迫り保善はペナルティーを連発する。ここでNo.8岨野が突っ込みインゴールまで突き進んだが、ここは惜しくもノックオンとなりまたしても先制点は奪えない。

14分。しかしその保善スクラムからのATに対し、SH横尾・FL竹内が猛然とタックル。保善はボールを出すことが出来ず、法政は5mでのマイボールスクラムという大チャンスを再び得る。ここでチームが選択したのが何十回と練習してきたサインプレー。そしてボールを託された岨野は走り出しスピードに乗った。100kgの体重に常人離れした身体能力の持ち主は、スピードに乗ると誰にも止められない。保善DFを吹き飛ばし、ついにインゴールへと飛び込んだ。トライ。７－０。

17分。その後は保善も反撃を見せる。キックオフから攻撃権を得ると、大型FWが猛然と連続ATをしかける。しかしここはCTB松元を中心とした低く激しいタックルでゲインラインを超えさせない。

24分。しかし法政は激しい保善のATに対して徐々に下げられ、たまらずオフサイドを連発してしまう。レフリーからの警告があったにもかかわらずその次のプレーでもオフサイドを犯し、主将PR金森がシンビンを受けてしまう。

24分。金森を失った法政はその後の保善のピックゴーATの前にジリジリ下げられ、前半ラストプレーでトライを奪われてしまった。７－５。

ここでハーフタイム。

金森は後半5分までシンビンが継続されるためハーフタイムのチームの輪に加われない。精神的支柱がチームをまとめ仕切り直せないと後半はもっと苦しくなる、と思われたそのとき、2人の男がチームに集めていた。FWリーダーの堤、BKリーダーの松元である。「金森が戻ってくるまで踏ん張ろう」そう言ってチームを鼓舞していた。そしてチームは不安になるどころか勢いを増し、後半最初の得点を挙げる。

後半1分。法政キックオフを保善はいきなりペナルティーを犯す。ここでチームはペナルティーゴールを狙う選択をする。距離は約30m。皆から託された山福の右足から蹴りだされたボールは、見事ボールのど真ん中を越えていった。１０－５。

3分。しかし保善も諦めない。法政陣20m付近でラインアウトを得ると、ここで大型FWによるモール攻撃。前半は完全に止めていたモールだったが、このモールアタックは非常に強力でありついにはインゴールまで押し込まれてしまった。１０－１０。

5分。金森がシンビンから戻り、再び15人となった法政。

10分。保善陣22mから法政ボールラインアウト。二高との試合ではボロボロだったラインアウトだったが、しっかり修正を重ねてきた。この日は大事なところでしっかりゲットしており、このラインアウトも綺麗に決まった。ここからCTB吉原が角度をつけたアタック。ゲインラインを超えたこの攻撃に対し保善はたまらずペナルティー。法政は再びショットを選ぶ。先程とほぼ同じ位置からのペナルティーゴール。そして再び山福が蹴ったボールは、またしてもポールのど真ん中に決まった。１３－１０。

その後は保善の激しい攻撃に防戦一方となる法政。

15分。自陣ゴール前でペナルティーを犯し大ピンチに。保善はまたしてもピックゴー攻撃を仕掛けてくる。インゴールまで押し込まれるもここはなんとかノーグラウンディング。

あと10分しのげば勝利が見える、そんな時間帯になったが、そうは甘い相手ではなかった。

18分。ついに逆転トライを奪われる。保善の攻撃を何とかしのぎ続けていた法政であったが、強大な圧力に対してついにピックゴーからインゴールへ飛び込まれてしまった。１３－１７。

21分。法政も諦めずペナルティーを得ると吉原がナイスゲインを見せるも、ここで痛恨のミスがあり大きく陣地を挽回される。

そしてロスタイム。
この試合のラストプレーを私は生涯忘れることは無いだろう。

24分。自陣10mで得たペナルティーに山福が素早く反応。戻りきれていない保善DFを切り裂きスピードに乗って走り始める。得意のステップで次々とかわし最後のFBとの1対1も制した。逆転トライか、と思われたが保善WTBが間一髪追いつき止められてしまう。しかしこのプレーで法政は再びペナルティーを得る。全員の気持ちを込めたこのボールを託されたのは岨野力也。チームで一番の力持ちは、ボールを持つと右サイドへ猛然とダッシュ。保善DFも必死に飛び出しタックル。この試合最後のプレーの結果は、岨野がインゴールに飛び込みボールを抱えて地面にダイブした瞬間に終わった。
トライ！逆転したのだ！１８－１７。

そしてノーサイドの笛。

勝った！
勝ったのだ！

全員が泣いていた。OBも泣いていた。保護者も泣いていた。まだラグビーのルールすら知らない新入部員達も泣いていた。コーチも泣いていた。私も泣いた。

たかだか都予選の初戦に勝っただけだ。なにを泣いているんだと思われるかもしれない。しかし日々血のにじむような努力を重ね、全員の力を結集し、そして強力な敵に勝った。そこに試合の大小は存在しない。いいじゃないか、泣いたって。そのくらいの勝利だったのだ、法政にとっては。最後まで走り続けた選手達を、私は心から誇りに思う。

しかし一方で、やっとスタートラインに立てただけだということも事実だ。ここからさらに厳しく長い戦いが我々を待ち受けている。今日の勝利を今年一番の勝利にしないために、次の大泉との試合に勝つために、関東大会に行くために、歩みを止めてはならない。喜ぶのは今夜まで。明日からはまた必死に努力していこう。そしてまた勝って泣こうじゃないか。

伝統復活法政健児！