GAME03

春季大会トーナメント2回戦。新人大会は合同チームで戦い、ファーストジャージで戦えるのは昨年の全国大会都予選以来だった。当然選手のモチベーションは高く、いい形でチームを作ってきた。だが、数日前に大変残念な出来事がチームを襲った。長年チームを支えてくださった永峯さんが逝去されたのだ。お世話になった永峯さんへのご恩に報いるためにも必ず勝とう。選手達はそう言い合い、左腕に喪章をつけて試合に臨んだ。

荒川工業ボールのキックオフ。ついに関東大会の予選も兼ねた、春季大会が始まった。

前半1分。練習通りのサインプレーから、いきなりCTB櫻井が荒川DFの間を突破。インゴールまで素晴らしいスピードで走りきり先制トライをノーホイッスルで挙げる。７－０。

3分。荒川陣で得たラインアウトから法政FWのモール攻撃。3週間前の法政二高との試合までは法政はモール攻撃をしたことが無かった。モールの防御方法も確立していなかったため、二高にいいようにやられた。だからモールを徹底的に練習した。OBにたくさん来てもらって台になってもらった。そのおかげで力強いモールが組めた。OBに感謝だ。
このモールで一気にゴール直前まで迫る。荒川も必死のディフェンスを見せ一度はターンオーバーをされるも、ここで櫻井が火の出るようなタックル。荒川を陣地に釘付けにする。

7分。ペナルティーを得た法政はNo.8五反田がハリー攻撃。そこからSO大仁が得意のパスダミーで抜いてトライを奪う。１４－０。

9分。まだまだ法政の時間帯。連続アタックを繰り返し右サイドが完全に余った。荒川DFが必死に戻ろうとするところでポイントサイドが空いた。ここをSH横尾が見逃さず自ら突破しトライ。２１－０。

17分。ペナルティーから横尾がアタック。チームで一番小さい男が、この試合何度も激しく突破した。3人交わしたところで櫻井へパス。櫻井が走りきってトライを奪う。２６－０。

19分。LO堤たちが体を張ってゲインしたボールを大仁が右へ展開。ここに走りこんだFL白井が力強いランで右隅に飛び込んだ。３３－０。

24分。HO渡邉が大きなゲインを見せ、荒川はたまらずペナルティーを犯す。このゴール前でのチャンスに五反田がハリーで飛び込みトライ。４０－０。

ここで前半終了。
久しぶりの勝ちパターンだ。いや、ここまで練習の成果が出た試合は初めてかもしれない。少し気が緩んでしまうことも懸念されたが、ハーフタイムには自分達で反省を出し合い修正をしていた。まだまだ気合がみなぎっていた。

後半も法政の勢いは止まらない。

5分。荒川陣5mスクラムから五反田がエイタン攻撃。ブラインドFLとWTBをなぎ倒しトライ。４５－０。

8分。荒川も粘りを見せ法政ゴール直前まで攻め込む。だがあわやというところで法政DFが踏ん張りこれをターンオーバー。そしてこのボールを大仁が持ち出し独走。なんと100mを走りきりインゴールへ飛び込んだ。５０－０。

12分。自陣から綺麗にパスをつないで攻め込む。白井から途中出場のWTB佐々木へ。佐々木は自慢の快足を活かし、トライを奪った。５７－０。

18分。FB山福の素晴らしいステップでチャンスを作ると、右展開から内側を走ってきた堤へ。堤はチームでも１・２を争う縦の強さを活かし、敵を引きずりながらインゴールまで突き進んだ。６４－０。

20分。まだ法政の足は止まらない。右展開から逆目アタック。これも練習してきた形だった。このチャンスをまたしても五反田が素晴らしいスピードで突破。この日3つ目のトライ。７１－０。

24分。法政の連続アタックから大仁がインゴールへ。大勢が決しているにもかかわらず、荒川DFに掴まれながらセンターまでボールを運び中央にトライ。最後まで勝ちにこだわる姿勢を見せた。７８－０。

そしてノーサイドの笛。

まずはこの勝利を素直に喜びたい。トーナメントである以上、勝ち進むことが何より大事だ。
そしてファーストジャージを着ての勝利を喜びたい。1年ぶりだ。悔しかったし長かった。これからはこのジャージでたくさん勝とう。
そして何より、左腕に喪章を巻いて戦い、そして勝てたことを喜びたい。永峯さんは時に優しく、時に厳しい先輩だった。でも今日の試合は天国で笑顔で見ていてくれただろう。

次はいよいよ本郷高校。言わずと知れた強豪だ。でも俺達はここに勝つためにこれまで必死に練習してきた。言葉では表現できないほど過酷な練習もしてきたはずだ。全てはこの試合のために。

だから勝とう。

勝って関東大会への扉を開け！