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いよいよ運命の一戦を迎えた。全国大会東京都予選1回戦。相手は成蹊高校である。成蹊高校は同じ吉祥寺を本拠地とし、これまで幾度となく共に練習し試合をしてきた歴史がある。そして5年前には花園にも出場している強豪でもある。
負けたら引退の最後の大会。3年生12人が全員揃って先発し、心を1つにした。『このチームが好きだ。このチームでもっと一緒にやろう。』そう言い合ってグランドへ飛び出していった。

成蹊ボールのキックオフ。

序盤は一進一退の展開が繰り広げられる。法政はしっかり陣地を取るためにキックやFWを前に出す戦術を選ぶ。一方成蹊は自慢のBKで自陣からでも展開し、法政のDFラインを突破しようと試みる。

7分。最初にチャンスを得たのは法政であった。成蹊陣奥深くまで攻め込み、もう少しでトライというところまで侵入するも、ここは自らのミスによって得点を奪えない。

しかし、その後も法政が攻め込む時間が続く。

12分。またしても法政のチャンス。成蹊陣10m付近でペナルティーを得る。ここで選択したのはPG。キッカーはCTB清水。これまで幾度となくチームを救うキックを蹴ってきた、非常に成功率の高いキッカーに託す。しかしここは不運にも外れてしまった。距離は十分であったもののわずかに右にそれ、先制点は奪えなかった。

それでも法政は前に出続け、成蹊を法政陣に入れさせない。

14分。そしてまたも法政のチャンス。成蹊陣5mでのラインアウトから自慢の大型FWによるモール攻撃。あと一押しでインゴールというところまで迫る。しかし成蹊のDFもすばらしく、低いタックルとディフェンスで法政FWを食い止める。そしてこのチャンスも得点に至らなかった。

そしてついに逆襲を食らう。

18分。まだまだ成蹊陣で攻撃を展開する法政。10m付近でのマイボールスクラムから左展開。しかし成蹊BKのDFはものすごく早く、あっという間に間合いを詰められる。そしてプレッシャーを受けた法政BKに痛恨のパスミス。ルーズボールに一早く反応した成蹊BKがそのボールをピックし走り始める。法政は全員が前がかりになっており、DFに行ける選手がいない。しかし逆サイドからWTBラオクスが猛然とダッシュし、自慢の俊足で成蹊選手の背後まで迫る。しかしラオクスの最後のダイブも数センチ届かなかった・・・。トライ。ついに均衡が崩れてしまった。0−7。

その後も法政は成蹊陣に攻め込むが、あと一歩のところで届かない。

ここでハーフタイムの笛。


ハーフタイムではいつもと同じ光景が見られた。顧問やコーチが指示を出すのではなく、まずは自分たちで改善点を出し合い、そしてキャプテンを中心にもう一度気合いを入れ直す。これまで常に誰かに頼りっぱなしだった第63代。本当に成長したな。君たちが頼もしく見えた。

前半はミスや反則が多く、攻めながらも得点を奪うにいたらなかった。後半はもっと集中して攻めていこうと確認して再びグランドへ戻っていった。


後半も前半と同じ展開が続いた。
法政はしっかり陣地を取り、成蹊陣でゲームを展開する。成蹊はどんなにインゴールが近くともBKでの展開にこだわり法政を抜きにかかる。法政は何とかこの攻撃をDFで食い止め、成蹊を自陣に釘付けにする。しかし成蹊のDFは非常に激しく、法政はギリギリまで攻め込むもトライが奪えない。そんな展開がずっと続いていた。

9分。しかしここで法政は大チャンスを迎える。成蹊陣22mの内側でラインアウトを得ると、これを法政はピールオフ攻撃。モールだと思っていた成蹊DFの裏をかき、一気にゴール前へ。成蹊DFも何とか食い止めようと必死にタックルをするが、法政は内側から走ってきたFWがボールをつなぎ、最後はNo.8高柳がインゴールに飛び込んだ!法政応援団が一気に沸いた。トライ!!だと誰もが思った・・・。しかし笛が鳴った。法政FWがボールをつないだときにノックオンがあったのだ。大歓声に包まれていたために、レフリーの笛が聞こえなかった。非常に惜しいプレーであった。

しかしそれでも法政はあきらめない。
むしろ先ほどのチャンスで再び息を吹き返し、大きな声を出しながらもう一度トライを奪うために前に出た。

13分。そしてついにこの瞬間が訪れた。
成蹊陣5mからマイボールスクラム。幾度となくチャンスを迎えながらことごとく成蹊DFに跳ね返されてきた。しかしそれでも法政は自分を信じて突っ込む。自分たちが一番自信のあるプレー、それはFWのゴリゴリ攻撃だった。何度もこれで勝利を奪ってきた。そしてここで彼らが選んだのもゴリゴリだった。成蹊DFはやはりすばらしく、体の大きさで劣りながらも地を這うようなタックルを突き刺してくる。あと5mが遠い。しかし法政はあきらめない。跳ね返されてもしっかりハンマーをし、再度突進する。やがて数センチずつではあるが前に出始めた。ジリジリとゲインを重ね、そしてついにインゴールに飛び込んだ。トライ。感動の一瞬であった。
しかし、このコンバージョンはあろうことか成蹊にチャージされてしまう。リードされたまま終盤を迎える。5−7。

ラスト10分。両チームとも感情丸出して戦った。ヒートアップし過ぎてしまう場面もあった。もちろん誉められることではない。だが、お互いのこの試合にかける想いは伝わってきた。法政が成蹊陣で攻め、成蹊が必死のDFを繰り返す。成蹊は最後まで自陣でもボールを回し、法政もそれをよく防いだ。しかしどうしても得点は奪えない。

ロスタイム。法政は最後の攻撃を仕掛ける。ハーフウェーライン付近からFWを中心に攻める。激しい攻防となった。一度でも相手がペナルティーを犯せば清水のPGで逆転だ、そんな思いが頭をよぎるが、成蹊DFはミスを犯さない。そんな時間が続いた中、ラックのボールが横に転がり出てしまった。そしてこれを拾ったのは成蹊だった。ボールを真横に蹴りだす。そして同時にノーサイドの笛が鳴った・・・。



負けた。



負けてしまった。
秩父宮で勝つという夢も、63代で過ごした時間も、全て終わりを告げてしまった。
勝負は時の運と言う。戦いをすれば必ず勝者と敗者が生まれる。それはわかっている。だが、今日負けるのが我々でなくても・・・、そう思わずにはいられなかった。

しかし、トーナメントは勝ち進めなかったが、平野率いる63代は本当に大きく成長した。この代は過去と比べても稀に見るヤンチャな代だった。ヤンチャと言えば聞こえはいいが、ラグビーに対しては後ろ向きな選手が多く、そして何より仲間やチームのためにプレーするという気持ちが希薄な代だった。どれだけ怒っただろう。何度罰走を課しただろう。何時間一緒に奉仕活動をしただろう。
そんなヤツラが、今日の試合では本当に素晴らしい姿を見せた。仲間のミスを一切責めない、どころか、常に背中をたたいて励ましていた。お前のミスは俺が取り返すと言っていた。試合後キックを外してしまい泣き崩れていた清水に駆け寄り、『ありがとう。お前のおかげでいっぱい試合に勝てたよ。』と肩を抱いていた。
なんと素晴らしい男たちに成長したことだろうか。

本当に明るい代だった。毎日の練習は笑顔にあふれ、それでいて気持も熱い代だった。私にとって、毎日グランドで一緒に馬鹿をやっていたことがかけがえの無い幸せな時間だった。それが無くなってしまうことが、本当は一番寂しいかもしれない。


思えば本当に面白いヤツばっかりだったなあ。


松井貴大
この明るい代の中で一番大人しく、一番覇気を感じなかった。声が出ないからってグランドで大声でしりとりさせたっけな。そんなお前が試合終わって誰よりも先に『大学でもラグビー続ける』って言ったとき、本当に嬉しかった。

宮本廣樹
チーム1のエンターテイナー。そしてチーム1のお調子者。お前のせいで俺は何度担任の先生に頭を下げただろう。でもな、グランドにいるときのお前は、頭の先からつま先までラガーマンだったよ。信頼してた。

小津久典
誰よりも強い体を持って入部してきたお前が、誰よりも早く辞めたいと言った。でもあの時踏ん張ったから今日があるんだ。よくがんばったな。小津久典というチームのマスコットがいなくなると寂しいよ。

岡本康太郎
『男だったら・・・!』という言葉が大好きな岡本。埼玉をこよなく愛する男。勝っても負けても顔をクシャクシャにして泣く熱いヤツ。怪我が多くて辛いときもあっただろうけど、最後の涙は決して後悔の涙じゃなかったはずだ。

井上真一
中学ラグビー部のキャプテンだったのに、一番最後に入部してきたな。最初は体は大きいのに体幹も体力も弱くて。でも本当にたくさん努力して、今はお前を止められる相手を探す方が難しくなった。ウチのエースだ。

高柳勇斗
ダメな代と言われた中で、3年間真面目にラグビーに打ち込んだ男。常に大きな声を出しチームを引っ張り支え続けてくれた。後輩を教えているときは本当に優しく厳しい。教師になれよ。きっとお前ならいい先生になる。

青木智史
智史はとにかく自信を持てないプレーヤーだった。誰かに文句言われても言われっぱなし。そんなお前が今ではFWもBKにも指示出したり怒ったりする。ずっと青木って呼んでいたのに智史って呼ぶようになったのは、きっとそんなお前を誇りに思ったからだろう。

杉山了伍
チーム1のヤンチャ小僧。6年間常に俺とぶつかってばかりだったな。時には憎たらしく感じることもあったのに、お前は毎日俺に笑顔で『コンチャッース!』って挨拶してくれる。嫌いになれなかったよ。センスはチーム1。大学でも続けろよ。

高野祐一
最初は大人しく見えたが、実は了伍よりも宮本よりも喧嘩早い男。スイッチが入ると獲物を狩るような目でプレーしてた。格闘技を選んだことは正しかったよ。毎日ナルシストのように脱いでたお前の裸体を、もう見られないんだな。

星谷孝太朗
高柳と一緒に、最初から真面目にやっていた数少ない男。いつだって笑顔で、いつだって大きな声を出し、いつだってラグビーが大好きだった。中1の頃はのび太君みたいだったのにな。本当に立派になった。

ラオクス ジュリアン
7月に彗星のごとく現れたリーサルウェポン。野球部で四番を張ってだけあり、体もスピードも常人離れしていた。でも、何より嬉しかったのは、お前の素質ではなくその人懐こい性格だよ。いっぱい笑顔をくれて、ありがとう。

平野睦
偉大なるキャプテン。この個性溢れる代をまとめるのはさぞ大変だったろうと思う。でもお前をキャプテンに指名したことを後悔したことは、一度たりとも無い。睦だったから、最後にみんなが笑顔で終われたんだよ。お疲れ様。ゆっくり休め。



決して優等生ではなかった。でもこの12人と一緒にやれたことは私の誇りです。本当にたくさんのいい思い出をもらいました。今まで本当にありがとう。

みんなはこれからはOBとなるけれど、私の教え子であることは一生変わりません。いつでもグランドに遊びに来てください。私はいつもここにいます。




法政

1
松井 貴大
3
2
宮本 廣樹
3
3
小津 久典
3
4
岡本 康太郎
3
5
井上 真一
3
6
平野 睦
3
7
山崎 悠生
1
8
高柳 勇斗
3
H
9
青木 智史
3
10
杉山 了伍
3
T
B
11
高野 祐一
3
12
星谷 孝太朗
3
13
清水 虹輝
2
14
ラオクス ジュリアン
3
FB
15
出野 拓
2



16
渡辺 雄太
1
17
一野 祐文
1
18
池永 慶祐
1
19
長谷川 誠輝
1
20
21
22
23
24
25
法政
大東
1
1
PG
DG
0
前半
7
1
PG
DG
5
後半
0
5
合計
7

交代