GAME02

新人大会トーナメント3回戦。対戦相手は強豪・大東大一高である。言わずと知れた名門で、過去には全国制覇を成し遂げている。昨年も新人大会の2戦目で、同じく全国制覇をした目黒学院と対戦し、2点差で惜敗した。もうあんな悔しい思いはしたくない、全選手がその気持ちを抱えてグランドに立った。過度な緊張は無く落ち着いており、それでいて気合がみなぎっている、選手たちの顔はそんな風に見えた。運命のキックオフの音が鳴り響いた。

大東ボールでキックオフ。

立ち上がりに勝負をかけていた法政は素晴らしい出足を見せる。序盤から大東陣深く攻め込み、攻撃権を渡さず、大東を敵陣に釘付けにした。

4分。大東の反則で得たアドバンテージを有効に使い思い切って勝負。SO杉山のゴロパンが見事WTB高野へと渡り、高野が敵に捕まりながらもインゴールまで突き進む。しかし残念ながらグラウンディングまでは惜しくもいたらず先制のチャンスを生かせなかった。だが法政ペースは続いていく。

6分。ついに先制点が生まれる。法政の攻撃はやまず、大東は必死にしのぐもペナルティーを犯す。これをキャプテンのCTB世古がペナルティーゴールを狙う判断をする。そして見事ど真ん中に決めた。３－０。

先制点以降も法政ペース。ほとんどの時間を大東陣内で攻撃し続けていた。

20分。大東陣22mで得たラインアウトからFWがモールを形成。そしてSH北が出したボールを杉山がビックゲイン。ゴールまであと5mというところで捕まりポイントになるが、このボールをFWリーダーのNo.8高橋が持ち出し突破。5人に囲まれながらも力ずくでこじ開け最後は大東のDFを引きずりながらもトライを奪った。８－０。

23分。この日好調であった法政の唯一の不安要素がキックを蹴った後のカウンターに対するDFであった。ここでも法政のハイパントをキャッチした大東FBが走り出すと、止まらない。あっという間に法政陣22m内側まで独走される。FB吉野が止めに行ったところでゴロパンを蹴られると、インゴールでこのボールのバウンドが運命のいたずらなのか、大きく逆方向へと弾み大東選手の前に落ちた。トライを奪われてしまった。８－７。

これで息を吹き返した大東は前半の残り時間、怒涛の攻撃を見せる。大型のFWの強さを前面に押し出したモール攻撃、サイドアタックの連続で、法政はじりじりと後退させられ、気づけば自陣5mまで下げられていた。しかし法政もここで意地のDFを見せ、PR佐藤の素晴らしいタックルなどで何とか大東の攻撃を跳ね返し、最後はボールを奪い取った。

そしてここで前半が終了した。

後半も立ち上がりは大東ペース。前半最後の勢いそのままに法政に襲い掛かってきた。しかし法政も立ち上がりに集中しており、何とかしのぎ続け、チャンスをうかがっていた。

8分。法政はついにボールを奪うと、逆襲を見せる。大東陣深くまで陣地を回復し、攻め続ける。ここで大東はたまらずオフサイドの反則。杉山がこのボールをハリー攻撃でインゴールに向けて飛び込んだが、わずかに数十センチ足らずトライは奪えなかった。

その後も大東の攻撃を必死に耐え抜く時間が続いていく。

21分。しのぎ続けた法政に再びチャンスが訪れる。FWがブレイクダウンでがんばりボールを奪取。北がこのボールにいち早く反応し、素晴らしいパスを高野へ送る。高野は10mを走りきり、最後は相手DFを引きずりながらインゴールに飛び込んだ。トライ！１３－７。

相手を突き放す大きなトライが生まれた。そしてこれを決めたのが1年生WTB高野祐一。入学時は縦に強さを見せ1年生試合でも活躍していたが、その後伸び悩み、レギュラーも同級生に奪われた。傍目に見ていても決してラグビーが楽しくなさそうに見えた。しかしこの大一番で初先発をつかむと、試合を決めるトライを奪ってみせた。トライも点数もうれしかったが、苦労人の祐一がこのトライを奪ったことが何よりうれしかった。

24分。最後まで守りに入らなかった法政はこの時間でも攻め続ける。足の止まり始めた大東がペナルティーを犯すと、世古がここでとどめのペナルティーゴール。引導を渡した。１６－７。

そしてノーサイド。

感動した。選手は泣いていた。OBも泣いていた。親も泣いていた。今日はみんな本当によくやった。ただ試合に勝っただけではなく、人の心を打つような、感動させるようなラグビーを見せてくれたこと、本当に誇りに思う。リードをして前半を終えたとき、少し嫌な気分がした。去年の春の大会で戦った玉川学園との試合を思い出したからだ。しかし今日は違った。リードをしていても常に挑戦者の気持ちで戦い、攻め続けていた。最後の一瞬まで、私に残り時間を聞いてくる選手は一人もいなかった。素晴らしい戦いであった。

来週の相手は六郷工科。名将･太田先生率いるチームである。絶対に油断はできない。自信は持ちながら、今日のように挑み続け、前に出続けるような試合を見せてほしいと願っている。

がんばれ法政！！