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全国大会都予選3回戦。対するは東京朝鮮高校。夏休みに2度練習試合を行い、いずれも1本差で負けている。高校日本代表や東京都選抜選手などを抱える強豪校である。しかし、法政にも明るい材料がある。伊藤主将が怪我から復帰し、皆と共にプレーできることになったのだ。伊藤を再びグランドへ立たせるために選手たちは勝ち残ってきた。その気持ちに応え、伊藤もグランドへ戻り、チームのモチベーションは最高のものとなっていた。

法政ボールでキックオフ。

SO世古のドロップキックをLO鶴田が猛然とチェイスし、ジャンプ。素晴らしいスピードのままこのボールをキャッチした。ファーストプレーから相手を圧倒することを目標にしていた法政にとっては、最高の出だしとなった。

その後朝鮮陣に攻め込むも、朝鮮DFのプレッシャーがきつく、法政はなかなか攻撃のリズムを見出せない。

7分。先制点が生まれる。法政BKのパスミスを拾われてしまう。懸命にFWが戻って食い止めるが、朝鮮はそこにラッシュをかけてきた。最後は余った右サイドに大きく展開され最初のトライを奪われてしまう。0−7。

その後は一進一退。朝鮮はペナルティーが多く、法政は再三チャンスを手にするが、やはりこちらもミスでチャンスをつぶしてしまう。そんな展開が繰り返されていった。

20分。朝鮮の度重なる反則にも心を切らすことなく前に出続け、陣地を大きく回復した。朝鮮陣22mでのマイボールスクラムから、世古がブラインドサイドにスペースを見つけ走りこむ。これが見事に功を奏し、世古はインゴールまで走りきった。難しい角度からのキックも決め、試合は振り出しに戻った。7−7。

26分。しかし朝鮮も反撃を見せる。法政陣ゴール前で得たラインアウトから得意のモール攻撃。以前の対戦でもモールでやられた法政はこの間ずっとモールディフェンスの練習をしてきた。この試合ではモールで決定機を作らせることなくよく食い止めていた。しかしこのモールだけは止められなかった。7−14。

その後法政は反撃を試みるがやはりミスが多い。しかし良いタックルが何本も生まれ、ゲインも切らせない。このままハーフタイムと思われた前半終了間際のラストプレー。

29分。法政が犯した反則から朝鮮はハリー攻撃。縦に縦に次々とつながれ、最後は13番のスピードで切り裂かれトライを奪われる。7−21。嫌な形で前半を終えることになってしまった。


ここで前半終了。


後半開始前、伊藤主将の周りに全選手が集結し、再度円陣を組む。逆転に向けてもう一度気持ちを入れなおした・・・はずだった。

後半開始してすぐのプレーで思わぬ形で出鼻をくじかれる。

1分。キックオフ後のマイボールスクラムを連携ミスから相手に奪われてしまう。前半最後のプレー同様、縦に縦に繋がれインゴールまで持っていかれてしまった。7−28。後半にもう一度仕切りなおして勝負をかけるつもりであった法政にとって、この失点は非常に痛いものであった。

しかしここでチームを救ったのはキャプテン・WTB伊藤であった。相手のペースになりかけた流れを、一発で断ち切る素晴らしいタックル。この日の伊藤は皆が自分を出場させるためにがんばってくれた恩を返すため、本当に体を張ったプレーをしていた。

そしてそんな伊藤のプレーに再び勇気をもらった法政は、次々と素晴らしいタックルを朝鮮に突き刺していった。FB深谷は火の出るようなタックルを何度も繰り出し、WTB吉野もすばらしいタックルを見せる。朝鮮はハイパント攻撃に頼るしかない状況へと陥り、法政のDFの前に出る姿勢に逆転を信じた者も少なくなかった。

しかし、法政はよくDFに行くも、攻撃に関してはなかなか活路を見出せなかった。LO前原の突破などをはじめ、様々な攻撃を展開するも、朝鮮の守備を粉砕するまでには至らず時間だけが過ぎていった。


そしてノーサイド・・・。


負けてしまった。目標としていた秩父宮へは行かれなかった。そして3年生と一緒にやるラグビーはこの試合が最後となってしまった。非常に悔しい。夏から非常に良い形で合宿を行い、強豪校とも五分に渡り合い、そしてモチベーションも高く臨んだ試合であり、選手たちも自信を持って戦ったはずだ。それだけに悔しかっただろう。しかしたくさんの応援に来てくださった方々が、みんな大きな拍手をしてくれていた。それは君たちが最後まで勝利をあきらめず戦い続けた姿に心を打たれたからだと思う。
だから胸を張ってほしい。3年生はこれで引退だ。この伊藤率いる第61代の11名は、入学してから今日の日を迎えるまで、1人も欠けることなく最後までラグビーを全うした。これは私の知る限り始めてのことだ。そしてその影響は大きく、過去2年間、後輩たちの退部者もいない。この3年間、法政高校ラグビー部に入部した人間の中で、途中で放り出してしまった人間は誰一人いないのだ。これは誇りに思え。すごく立派なことだ。その先駆者となった3年生には大きな感謝と尊敬を念を抱いている。
そしてそれと同時に全員が最後までラグビーを続ける環境に恵まれたことも感謝してほしい。過去には家庭の事情や体調の問題で、ラグビーが好きであるにもかかわらず部を去らなくてはならない選手もいた。しかし今年はみんな最後までラグビーを続けることができた。いろいろな人に感謝してほしい。そしてその中でも特に親御さんに感謝しなさい。君たちのサポートをしてくれたことはもちろん、毎日君たちの無事を祈りながら過ごす日々は、そんなに簡単はことではなかっただろう。


私自身高校3年生の担任であるため、今年の3年生には例年以上に思い出が多い。一人一人の顔を思い浮かべると、様々な記憶がよみがえってくる。


石井伸明
体が大きいという理由だけで美術室からグランドに引きずり出したな。でも練習を休むことなく、最後は素晴らしいスクラムを組みようになった。

森田高州
怪我に弱く、すぐ痛がって練習を休む。だが森田の怪我の多さは体を張ったプレーをしていた裏返しだった。最後の試合でプレーさせてやりたかったよ。

野越雅史
おそらく雅史のことは一番叱ったな。時にはずいぶん厳しい言葉も浴びせた。でもそれは試合に勝つためであり、お前の優しい人間性は疑ったことは無かった。

鶴田泰祐
なんでもこなせる泰祐にとってこんなにも思い通りにいかない3年間は初めてだっただろう。でもそこから逃げないで真正面から戦ってきた。必ず大きな財産になる。

前原宗明
ラップをこよなく愛する風変わりな男。宗明がいてくれたおかげで毎日楽しかったよ。3年間大きな怪我をすることなく練習し続けたことは自分を誇ってほしい。

本橋勇
副キャプテンとしてチームを支えた熱い男。小さな体で大きな敵を倒し続け体もボロボロだった。そんな本橋はバカも色々やったが、俺は信頼していたよ。

高野誠也
3年間ラグビーを続けて本当によかったな。みんなからも今までありがとうって言ってもらえたけど、誠也からのが一番胸を打たれた。背中を押してくれてきた仲間に感謝しろ。

鈴木勇太朗
正直いろいろとやりにくい部分もあったのかもしれないな。でも勇太朗はきっちり線を引いてきちんとプレーをし続けた。大学でも大活躍して俺の教え子だと自慢させてくれ。

神村賢
俺は高校生を一人の人間としてここまでリスペクトしたことは無かった。そのくらい人間的に魅力がある。学校の先生になってラグビーを教えるという夢、神村なら叶うと思うし、叶えてほしい。

伊藤了亮
自分からキャプテンをやらせてくれと言ってきたのは、俺の顧問生活の中でも了亮が初めての男だ。偉大なキャプテンのことを誰もが信頼し付いてった。誰も辞めなかったのはお前の力も大きい。お疲れ様。今はゆっくり休め。

深谷恭平
最初は全てにおいて自信が持てなかった恭平。泣いたこともたくさんあったな。でもすごく立派に胸を張る男になった。昨日流した涙は今までとはぜんぜん違うものだった。大学でもラグビー続けろよ。



明日からグランドへ行くと君たちは誰もいないんだな。頭ではわかっていても、グランドへ行ってみて初めてその寂しさを感じるのだろう。毎年経験することとはいえ、辛い。だが、寂しいのも悔しいのも思いっきりやったから。かけがえの無い仲間になれたから。だから法政高校でラグビーに出会ってそれを3年間やったこと、それを誇りに思ってほしい。いつか子供が生まれたら語ってやってくれ。『父さんはラグビーやってたんだ』ってな。

本当にお疲れ様。これからも卒業するまでは部員だ。グランドに来て後輩の面倒を見てやってくれ。そして卒業しても顔見せに来てくれ。俺は後30年くらいはこのグランドにいる。いつでも遊びに来いよ。




法政

1
石井 伸明
3
2
佐藤 匠
2
3
野越 雅史
3
4
鶴田 泰祐
3
5
前原 宗明
3
6
本橋 勇
3
7
高野 誠也
3
8
鈴木 勇太朗
3
H
9
北 知典
2
10
世古 陽泉
2
T
B
11
吉野 裕貴
2
12
高橋 湧
2
13
神村 賢
3
14
伊藤 了亮
3
FB
15
深谷 恭平
3



16
藤代 達也
2
17
宮本 廣樹
1
18
井上 真一
1
19
平野 睦
1
20
小津 久典
1
21
岡本 康太郎
1
22
星谷 孝太朗
1
23
高橋 宗平
1
24
青木 智史
1
25
杉山 了伍
1
法政
東京朝鮮
1
3
1
3
PG
DG
7
前半
21
1
1
PG
DG
0
後半
7
7
合計
28

交代