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全国大会東京都予選準々決勝。ついにやってきたこの日。因縁の敵である明治大学中野高校。春の大会で負け、関東大会出場の夢を奪われた相手である。
また、キャプテン吉岡をはじめとする法政一中でラグビーをしていた選手たちにとっては、中学最後の試合で負け引退させられたのも明大中野中であった。同じ相手に何度も負けるわけには行かない。悲願の花園出場のためにも、必ず勝ちたい試合であった。

法政ボールでキックオフ。

開始と同時に明治の猛攻を受ける。U-19の代表や吉岡と共に東京代表として国体を戦った選手が何人もいる明治の圧力はすさまじく、あっと言う間に自陣へ迫られる。法政も低く鋭いタックルで果敢に挑むも、ジリジリ後退させられる。
3分。ディフェンスラインが下げられたところで大きく右へ展開される。最後は大外まで綺麗に回されトライ。最初の流れをつかまれてしまった。0−5。
8分。自陣での密集の中でターンオーバーを喫する。SO薄井が火の出るようなタックルで食い止めるが、その後にフォローに来たのは明治の選手。ゴリゴリ押し込まれゴールを割ってしまう。0−12。
その後は法政もようやくペースをつかみ始める。自陣深くまで攻め込まれるシーンもあったが、法政伝統の低いタックルで相手の再三に渡るピック・ゴー攻撃をしのいでいく。
しかしちょっとしたミスから再び点数を奪われる。
20分。マイボールラインアウトを奪われてしまい、素早くモールを作られる。先ほどまではしっかり止めていたモールを、このときばかりは押されてしまった。そしてインゴールまで。0−19。
その後は法政も再び息を吹き返し、接点で明治を圧倒し始める。たまらず反則を犯す明治。ゴール前10m、絶好の位置でペナルティーを得る。ここはFB丸田のキックで確実に3点を、という判断もあったが選手たちは7点を取りに行った。明治ゴール前での激しい攻防となり、次第にボールは前へ。だがあと数メートルでトライ、というところで痛恨のノックオン。
そして前半最後に再び法政はピンチ。一気に自陣ゴール前まで攻め込まれるも、ここは防ぎきる。
そして前半終了。

前半終了直前にエースCTB楠原が古傷である肩を痛める。本人は気力で立ち上がり後半に臨むが、法政は大きな不安を抱えてしまう。

後半キックオフと同時に飛び出したのは、またも明治であった。
1分。法政のディフェンスの隙を突き、いきなりのトライ。0−24。あっと言う間の出来事であった。そしてここで法政の不安が的中してしまう。このプレイの中で楠原の肩が再び悲鳴をあげる。今度は立ち上がれない。交代を告げられグランドの外へと運び出される楠原。目には大粒の涙があった。悔しかったのだろう。しかし楠原の涙は全員に伝わった。主将No.8吉岡や副将HO遠山が『楠原のために!』と大声で叫ぶ。全員の気持ちが一つになっていた。
しかし、今度はWTB木村が走れなくなった。木村は9月に怪我をし、満足に練習ができないままこの試合を迎えた。公式戦は半年ぶり。全力で走るのすら2ヶ月ぶりという状態でここまで戦っていたが、限界であった。木村もここでグランドを去る。
選手は気力でがんばっていたが、二人を失った穴はあまりに大きく、後半17分までに3トライを追加される。気づけばスコアボードには43点の文字。
だが、法政はあきらめることだけはしなかった。
21分。ついに気持ちが通じる。明治陣内でのルーズボールに全員が反応。拾ったボールを全員で押し込む。止められても止められても、くじけることなく諦めることなく果敢に挑戦。その諦めない気持ちが明治ゴールをついにこじ開けた。トライ!!まさに意地のトライであった。7−43。
その後も法政は走り続け、最後の1秒まで逆転を信じて戦った。
だが、最後の時はやってきた。ノーサイドの笛・・・。



負けた。負けてしまった。今年も花園へは届かなかった。言葉では表現できないほどの悔しさと、もうこれでこのチームでラグビーをすることが出来ないのだという悲しみで、号泣する選手たち。何度目の当たりにしても、心が潰れるような思いになる。
その中で今年を象徴するような光景を目にした。泣き崩れる選手たちを一人ずつ抱き、一人気丈に仲間を励ます吉岡主将がいた。本当に素晴らしい男であった。彼がいなければ選手はここまではやれなかっただろう。彼だからみんなが付いていったのだ。私は彼に、心の底からありがとうと言いたい。


思えば色んなことがあった3年生であった。指導方針に不満を持ちそれをぶつけてきたこともあった。いい歳してムキになってタックルしたこともされたこともあった。入院した仲間のために日替わりで全員がお見舞いに行ったこともあった。気合いを入れるために夜遅くまで頭を剃りあったこともあった。法政二高に勝利し泣かせてもらったこともあった。とても語りつくすことなどできない思い出がこの10人にはある。

小さな体に闘志を詰め込んだスクラムの鬼
・・・大濱裕之

プレーは激しいが本当はお人好しの副将
・・・遠山周平

怪我をしてラグビーが出来なくなった後も1日も練習を休まなかった暴れん坊
・・・関谷俊彦

顔は怖いが誰よりも心優しいマッチョマン
・・・澤井正和

女みたいな喋り方をするが走りは誰にも負けない
・・・乾良太

花園出場のために帰ってきた読書家
・・・薄井智

かわいい笑顔の裏に隠された熱い魂を持った副将
・・・楠原光弥

究極の負けず嫌いでチーム1の快速・チーム1の泣き虫
・・・木村貴瑛

ぶっきらぼうに見えてチームメイトを誰よりも愛した男
・・・丸田喬仁

そして偉大なるキャプテン
・・・吉岡耕

私は君たちのことを忘れることはないでしょう。君たちと共にラグビーをしたことを誇りに思います。本当に楽しい時間でした。教えてもらったことばかりある3年間でした。ありがとう。君たちは一生法政一高ラグビー部の一員です。後輩たちに花園出場の夢を託し、それを実現させるために、時間のあるときにはいつでもグランドに来てください。待っています。本当にお疲れ様でした。



法政一

1
大濱 裕之
3
2
遠山 周平
3
3
玉川 嘉文
2
4
西勝 重明 
2
5
植松 聡宏
1
6
澤井 正和
3
7
小林 修平
2
8
吉岡 耕
3
H
9
乾 良太
3
10
薄井 智
3
T
B
11
三上 康平
1
12
河辺 賢人 
1
13
楠原 光弥
3
14
木村 貴瑛
3
FB
15
丸田 喬仁
3



16
渡辺 祐志
1
17
満尾 怜右
1
18
鈴木 遼平
2
19
井元 翔太
2
20
小池 幸宏
1
21
多田 健人
1
22
谷口 智規
2
23
小池 宏明
2
24
河内 孝裕
1
25
今井 涼
法政一
明大中野
3
2
PG
DG
0
前半
19
1
4
1
2
PG
DG
7
後半
24
7
合計
43

交代
入替
後半3分
13 → 22
入替
後半10分
14 → 23