コロナウィルス感染拡大の影響で、新人戦の後グランドで顔を合わせることが約4ヶ月にわたって出来なかった。合同選抜が中止隣KOBELCOカップや東西対抗に出場するという目標がなくなった。春季大会やアシックスカップ予選も中止となり、これまで積み上げてきたことを披露する場すら失われてしまった。世の中を見渡しても、甲子園や国体・インターハイが中止となり、オリンピックまでも1年延期という異例の事態となった。練習だけではなく学校も長期の臨時休校期間に突入し、友達とも会えなくなった。毎日のようにオンラインミーティングで心をつなぎ止めてはいたけれど、正直もう一度ラグビーをすることに以前と同じような情熱を持てなくなっていた選手もいた。
しかし、選手・マネージャーだけでミーティングをして、今後どうしていくのかということを真剣に話し合った。そして3つの目標を決めた。
①このメンバーで全員揃って法政のファーストジャージを着て試合をする。
➁その試合に勝つ。
③新入生を迎え入れて自分たちが得てきたものを継承していきたい。
というものであった。それからは迷い無く日々ラグビーに打ち込めてきた。
全国大会都予選トーナメント1回戦。
ついにその集大成となる試合がやってきた。全員で法政のファーストジャージを着ることを目標の一つにしてきた我々であったが、この日は黒いジャージを着ることにした。三鷹高校のジャージだ。都立三鷹のSO細井はこの黒いジャージに憧れて入学したが、入学後に部員難に陥りこの6年間、一度もこのジャージの袖を通したことがなかった。何年も苦しい状況の中で辞めずにきたのは「三鷹のファーストジャージを着て試合がしたい」という想いからであった。中学から合同チームで苦楽をともにしてきた法政のメンバーは、細井の想いを知り彼のために全員で黒ジャージを着ることを決めた。法政だけではない。今回の合同Dにはもう1チーム、日大二高も加わっている。法政・三鷹・日大二と言えば、中学時代にも合同チームを組んでおり、合同チームながら関東大会出場という快挙を成し遂げたチームである。みんなで黒ジャージを着ることに賛成してくれた。
もちろん勝たないと法政のファーストジャージを着るチャンスはない。是が非でも勝ちたい一戦であった。
マイボールでキックオフ。
このキックオッフのボールを日大二キャプテンFL三宮が素晴らしいジャンプから競り勝ちキャッチ。No.8中原がハンマーで支え突破したところで国立はたまらずペナルティー。絶好の位置から先制のチャンスを迎えるが、ここはノックオンでチャンスを逃す。
7分。今度は合同Dがペナルティーを犯しラインアウトからモール攻撃を食らう。一度は止めるもまたもペルティーからラインアウトモールを作られ、今度はトライまで持って行かれてしまった。国立にモール攻撃は強力であり、1ヶ月前の練習試合でもモールでトライを何度も奪われた。自陣での反則を犯さないことをテーマとしていたが、ここは相手のペースにはまってしまった。0-7。
10分。それでもすぐに反撃に転じる合同D。下を向かないところに成長を感じる。キックオフからまたチャンスを迎えると相手のペナルティーからFWのゴリ攻撃。ピックゴーの連続からPR松崎が同点トライを奪う。松崎、公式戦初トライである。7-7。
14分。FWの奮闘にBKも奮い立つ。ラインアウトから今度はBKが素晴らしい連携アタックを見せる。CTB古瀬がスピードを活かし大きなゲインを見せると、CTB小林(雅)が相手ラインを切り裂くと、FB小林(良)へと綺麗につながり、小林(良)がインゴールまで走りきった。12-7。
20分。俄然勢いづく合同D。SH黒柳→細井→小林(雅)と繋がり、小林(雅)が突破したところで古瀬へバックフリップでオフロードパス。このボールを古瀬が大きくゲインする。敵陣ゴール前まで迫ると、ここからはFWのピックゴー。今度はPR桑原が飛び込みトライ。19-7。
このあとは三宮のビッグゲインなどで再び国立陣へ攻め込むが、得点は動かないままハーフタイムへ。
ハーフタイム中も勢いづいている合同D。しかし国立の表情を見ると、彼らはまだまだ折れていなかった。
3分。キックがダイレクト二なりピンチを迎える合同D。ラインアウトからまたしてもラインアウトモール。体重では勝っているものの、よく練習されたモールは隙がなかなか見当たらずジリジリと下げられてしまう。そしてトライ。19-12。
9分。ここも簡単にペナルティーからラインアウトを献上する。またしてもラインアウトモール。分かっていても止まらない。ここもトライ。19-19。ついに追いつかれてしまう。
試合はまだ振り出しに戻っただけだが、非常に苦しい合同D。
10分。しかしここで日大二高のリーダーたちがチームを救う。三宮に加え、LO小村の素晴らしいタックル等で流れを引き戻していく。
21分。ここから試合終了までの8分間、ずっと同じ状況で試合は進んでいく。国立陣ゴール前で合同Dボール。合同Dはここはもちろんこの試合で効果を発揮してきた重量FWによるピックゴー攻撃を繰り出すが、国立は素晴らしいDFで最後の1mを防ぎ続ける。幾度となく繰り出される合同Dのピックゴーを、国立DFは素晴らしいDFで食い止め続ける。一度でも国立がペナルティーを犯せば、ゴール正面からのペナルティーゴールで勝利できると思っていたが、国立DFは激しくかつ規律正しく、反則を一度も犯さない。時間は経過していき、ノータイムになってからもこの攻防は続いた。そしてノータイムになってから4分後、ゴール前での攻防が始まってから約8分後、ついに合同Dのピック攻撃が国立DFを下げさせ、一瞬空いたサイドにLO宮尾が飛び込んだ。トライ。26-19。
ゴールが決まった瞬間にノーサイドの笛が鳴った。
大変嬉しい勝利であった。時にメンタル的な弱さを見せてきた法政であったが、リードされながら逆転し、追いつかれながらも最後突き放して勝利した。彼らの成長を感じることの出来た、嬉しい勝利であった。同時に都立三鷹にとっても嬉しい勝利になっただろう。今日の戦いぶりを見れば、三鷹の先人たちも目を細めてくれるのではないだろうか。
次はシード校、強豪明大中野だ。もちろん強いだろう。でもここまで苦しい思いをしてきた我々だ。いや、世の中全ての人たちが苦しい思いをしてきたんだ。そんな中でこんな心が震えるような試合をさせてもらえる、これを感謝できなくて何に感謝できるだろうか。相手が強いとか弱いとかは関係ない。まずはこのチームでこのメンバーでファーストジャージを着て思い切りラグビーできる幸せを噛みしめよう。
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