全国大会都予選トーナメント1回戦。
3年生にとっては、いよいよ最後の大会である。本校の3年生は1名だけ。マネージャーの新町典子だ。昨年の溝井舞と一緒に、男子部員0という日々を経験しながらも、そこから逃げずに舞と2人で部を引き継ぎ、新入生を勧誘し、再び大会に参加できるようになった。そんな典子にとって、最後の大会となる。早いものだ。存亡の危機にあった我が部を次の代へと継承してくれた彼女に、最後の大会では大きな思い出をプレゼントしたい、私はそう思っていた。多くの後輩たちもそう思っていたはずだ。
マイボールでキックオフ。
SO細井のドロップキックがいいところに上がると、猛然とラッシュ。東海大高輪台陣でボールを奪いいきなりチャンスを迎える。
序盤は一進一退。合同Dは集中力が高くAT・DFともに良い形を作れている。だがペナルティーが多い。一方、高輪台のアタックは強力ではあるものの、ミスも多くなかなか決定機をつかめない。
12分。先制点を挙げたのは合同Dだった。自陣22m付近で高輪台のアタックを受けていたが、ミスでボールがこぼれる。このボールにいち早く反応したのはCTB小林。DFをかわしすぐさま横にいるCTB田中へパス。田中はスピードアップすると前掛かりになっていた高輪台DFを振り切り独走。なんと70mを走りきりトライ。7-0。良い形で先制トライを奪った。
16分。勢いに乗った合同Dは再び攻め込む。No.8甲川の突破でゴール前に迫ると、FWのピック攻撃を繰り返す。高輪台DFがポイントサイドに寄ったところを見つけた長谷川がFWの9シェイプを選択。パスを受けたFL斉藤がインゴールに飛び込んだ。14-0。
その後も合同Dが攻め込む展開が続く。細井や主将SH長谷川のキックなどを効果的に使いながら、高輪陣へと攻め込んでいく。
24分。敵陣10mでペナルティーキックを得ると、FB古瀬の右足に託す。古瀬は入学以来、毎日PGの練習をしてきた。しかしここは40m以上の距離がある。残念ながら後一伸び足りず追加点は奪えない。
ハーフタイム。
これまでにないほど良い形でATはやれている。ハンドリングエラーやコミュニケーションミスも非常に少ない。あとはDFがもう少し揃って上がれば、更なる良い試合ができるだろう。そんな確認をしながら再びグランドへ飛び出していくフィフティーン。
後半の立ち上がりは高輪台ペース。ハーフタイムで落ち着きを取り戻し、力強いFWと見事な連係を見せるBKで、合同D陣へ攻め込んでくる。苦しい時間帯が続く合同D。
DFがなんとか粘りボールを奪い返すと、細井のキックで陣地を取り返す。この日の細井のキックは素晴らしく、チームを何度も救っていた。そういった流れが続いていく。
20分。ついに後半の得点が動いた。高輪台DFのギャップを見つけた細井が突破。一気に加速するとFBとの1対1に。ここは止められるも、フォローに走っていた甲川が素早くラックからボールを出しそのままアタック。インゴールへ飛び込んだ。21-0。角度のあるキックを古瀬もきちんと決める。
ロスタイム。高輪台のラストアタック。強力なFWを中心に、最後までゴリゴリ攻めてくる。ミスはなく少しずつゲインを重ねてくる。30以上のフェーズを重ねただろうか。最後はFWの連続ピック攻撃でトライを奪っていった。21-7。
そしてノーサイド。
東海大高輪台は、互いに人数が少なく、合同チームの活動の中で一緒に切磋琢磨してきた仲間だった。監督・選手、知っている顔ばかりだ。勝つことができたことは素直に嬉しいが、同時に彼ら3年生のラグビーを我々が終わらせてしまったことを思うと、やはり複雑な気分になる。
だが、勝ち負けというものはそういうものなのだろう。花園の頂点に立つチーム以外は、すべてどこかで負ける。負けないようにすることが大事なのではなく、勝ったチームは涙をのんだチームの分まで一生懸命に戦うことが大事なのではないかと思う。我々も東海大高輪台の分まで戦おう。次は桐朋高校だ。やはり知っている顔がたくさんある。だからこそ、全力で戦いたい。
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